2002年に独立した東ティモールは、長い戦乱の中にあり、その間多くの子どもは親を病死、殺害、虐殺によって失ってきた。ある子ども達はその現場に直面させられ、あるいは、自分自身も生存の危険にもさらされてきた。また、多くの女性はレイプされ、時には余儀なく出産せざるを得ない状況におかれた。その結果として産まれた子どもは、出生直後から捨てられ、あるいは、育児放棄されるという事態も生じていた。このような状況下にある多くの子どもは、孤児院での生活を送っている。 本研究では、そういった子ども達の身体面や健康面、心理的状況を把握すると共に、戦乱が与える影響を検討すること、心的外傷を負った子供達への援助の可能性を探り、効果的な援助方法を検討すること、さらに、東ティモール内に自国民における相互支援体制を確立するための方策を見いだすことを目的としている。 2005年度においては、現状把握を主たる目的として、身体・健康面を把握するための基本的計測指標を検討した。また、心理面の把握のために活用できるツールを検討した。その結果、文化や言語による影響の少ない統合型HTPを活用することとなった。 9月〜10月に現地に赴き、6カ所の孤児院、1カ所の障害児のための学校、1カ所の幼稚園を探し出し、身体面の計測と統合型HTPを実施した。 その結果、発育状況において栄養不良が見いだされた。また、心理面において、貧弱な体験、過去に受けた外傷の影響と思われる「傷っき」、悲哀感、統合されていない攻撃性の存在が示唆された。
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