研究概要 |
軽度発達障害:学習障害、注意欠陥/多動性障害,高機能自閉症それにアスペルガー症候群による社会的不適応は、いじめや不登校ばかりでなく、犯罪の犠牲者や加害者としてあらわれることが昨今話題となっている。本年度は、国内調査では、広島少年院における実践について調査した。発達障害の二次障害としての非行あるいは触法行為は、社会的不適応行為の中でも最悪の事態に陥ったケースだが、少年院で行われている実践について驚くべきものがあった。少年院のイメージは刑務所のイメージとダブルことがあるが、それとはまったく異なり、生活指導、学習指導、体育指導、職業指導それに集団活動への適応指導が行われており、素晴らしい実践が行われていた。広島少年院に入所している70%以上が軽度発達障害を有しているので、教育界への実践的なアドバイスが可能である。 韓国の調査では、日本にもあるフリー・スクールに在籍している児童・生徒の実態調査を行った。不登校による通常の学校に登校できない子どもたちの実態調査を行った。釜山広域市にあるフリー・スクールで調査を行った。調査結果の分析は来年度行い、日本の不適応教室やフリー・スクールの現状との比較を行う予定である。また、日本では盲・聾・養護学校で行われる自立活動や重複障害のある児童・生徒に対して「個別の指導計画」をたてなければならないが、韓国では軽度の発達障害を含めた全ての障害のある児童・生徒に「個別化教育計画」を作成しなければならない。日本では軽度発達障害に対しても、来年度から始まる特別支援教育では「個別の指導計画」を作成しなければならない。発達障害が原因で社会的不適応を起こした児童・生徒にも「個別の指導計画」を作成することになる。そこで、韓国で1994年から作成・実施されている「個別化教育計画」の実態を調査した。日本では盲・聾・養護学校で主として「個別の指導計画」を作成しているので、全国の知的障害養護学校での「個別の指導計画」の実態と韓国の知的障害養護学校の「個別化教育計画」の実態を調査して、その実情と課題を明らかにした。来年度は、軽度発達障害児に対する日本における「個別の指導計画」と韓国における同児童生徒の「個別化教育計画」を比較し、発達障害のある児童・生徒の社会的不適応を避けるための教育的支援を行う計画としての「個別の指導計画」の在り方について展望をつかむために調査研究を行う予定である。
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