研究分担者 |
多田 隆治 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (30143366)
田近 英一 東京大学, 大学院理学系研究科, 助教授 (70251410)
後藤 和久 東北大学, 大学院工学研究科, 助手 (10376543)
長谷川 卓 金沢大学, 理学部, 助教授 (50272943)
豊田 和弘 北海道大学, 地球環境科学研究科, 助教授 (10207649)
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研究概要 |
本年度は,キューバ中部(サンタクララ,フォメント地域)において詳細な現地調査と高解像度試料採取を行った.そして,サンタクララ地域の白亜紀/第三紀(K/T)境界層の上下層から陸起源有機化合物を抽出し,その炭素同位体比(δ^<13>C)を測定した.その結果,境界層直上の浮遊性有孔虫Pα帯に相当する層位範囲下部で,δ^<13>Cが1〜1.5‰負へシフトすることが明らかとなった.この変動は,世界各地のK/T境界層から報告されているδ^<13>Cの負のシフトと対比できる可能性がある.また,陸起源有機化合物組成も,同層位範囲で顕著な変化を示すことが明らかとなった. 一方,フォメント地域のK/T境界層では大規模なトレンチを掘り,三次元的に堆積構造を調べた。その結果,津波の作用によると考えられる斜交葉理層が,少なくとも5層重なっていることが明らかになった.また,K/T境界層とその上位層の境界付近を約3m掘削し,衝突後約数十万年間の生層序の確立と無機・有機炭素同位体比組成分析を調べるのに十分な解像度・鮮度の試料を得ることができた. さらに,メキシコ国立自治大学において,同大が採取したクレーター外部試料(UNAM5,UNAM7)およびクレーター内部試料(YAX-1)の記載を行った.これらのコアは,衝突クレーター周辺で掘削されたコアの中で,現在入手可能なものである。その結果,衝突メルト層はクレーター内にのみ堆積していること,最上部に見られる再堆積によって形成された層は,クレーター内部に向かうにつれて層厚が急激に厚くなり,斜交葉理層の存在などからクレーター内部への海水の流入に伴って形成された可能性が高いことが明らかになった.
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