研究概要 |
南米チリの三重会合点付近の南緯44度から49度、西経74度から71度に、合計60台の地震計によって2年間にわたってデータを取得した(広帯域地震計20台(2年間のデータ取得)、短周期地震計40台(1年間のデータ取得))。本年度は、得られたデータに基づき、地震波トモグラフィー(P波、S波)、表面波解析、およびレシーバーファンクション解析を行い、地域下の地殻・マントルの地震波速度構造を制約した。P波およびS波を用いたトモグラフィー解析では、沈み込むスラブのイメージが比較的明瞭に描かれており、調査地域の北から南に向かって系統的に沈み込むスラブの形状および周辺の速度構造が変化することがわかった。北部では、数十Maの年齢をもつ本地域内では比較的古いプレートが沈み込むが、ここではスラブが10-20度の浅い角度で沈み込み、東側(より内陸より)100-200KM(水平距離)において急に折れ曲がり、30-45度程度の急角度な沈み込みが起こっている。海嶺沈み込みの起こっているタイタオ半島を含むセグメントおよびそれ以南でも同様の折れ曲がりが見られるが、ここでは、スラブの下側および沈み込んだ海嶺に相当する部分で顕著な低速度領域がみられ、海嶺沈み込みにより、熱いマントル物質が浅所にまで到達していることを示唆する。さらに、スラブが折れ曲がる位置が南に行くほど内陸側にずれるため、スラブウインドウ(沈み込んだ海嶺に対応する隙間)以外にも、セグメント間に「隙間」が存在することが示唆される。本地域の平均的な地震波速度構造はグローバルな平均的構造よりも10%近くも低速度であること、および(おそらくは地殻内部に)明らかな異方性が認められることなどが分かった。また,温度構造を考慮した物質科学的研究も行い,海嶺の沈み込みをともなうサブダンクションの描像を得ることができた。
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