本研究課題では、グリーンランドに産する世界最古のグラファイトが38億年前の生物の痕跡であることを証明することを主目的とし、それに付随する諸問題を別のフィールドワークを通して明らかにする課題である。19年度は本課題を完成させるために、2つのフィールドワークを展開し前年度までの成果を発展させた。フィールドから得られた試料に対して各種分析を行い、成果の論文化を前進させた。具体的には、7月の2週間グリーンランドイスア地域でコペンハーゲン大学の共同研究者とフィールドワークを行った。その結果、前々年度に見いだされたグラファイトを含む露頭の延長にも新しい露頭があり、そこを精査した。それにより、グラファイトを含む地層の堆積環境が一般化された。岩石自身は強い変成作用を被っているため、38億年前の情報とそれ以降の情報が同一岩石に混在している。そこで全試料に対しては各種化学分析や電子顕微鏡観察を行い38億年前の情報を抽出する必要があった。それらの分析により、グラファイトのミクロレベルの産状に特異的な特徴があり生物由来であることを強く示唆するデータを得た。また砕屑性のジルコンを見いだし、研究対象としている地層が真に陸源由来の38億年前の海洋堆積物であることを証明した。これらの成果は国際学会などで既に公表された。またJAMSTEC広報誌「ブルーアース」にも紹介され研究成果の社会還元を行った。カナダ・スティープロック地域でも30億年前の地層を調査し、比較的変成作用を受けていない地層の中でのグラファイトの産状や化学組成に関して研究を行った。それによりイスア地域で見いだされたグラファイトと多くの共通点が見いだされ、イスア地域のグラファイトが生物由来である間接的証拠を得た。この成果も既に国際学会で発表された。
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