研究概要 |
太古代における地球環境を復元すること(たとえば酸素に富んだ大気がいつ地球表層に出現したのかを特定することなど)は,生命の発生・進化に関わる極めてインパクトの高い研究課題である.南インドのダルワール地塊は,太古代後期の縞状鉄鉱層,Mn鉱床,ストロマトライト,有機物に富んだ泥岩などの堆積岩が広範に分布する,世界でも数少ない地域であり,本申講研究を展開する地域として最適である.本申請研究では,南インドのダルワール累層群の堆積岩類とそれに伴う緑色岩類の風化変質を受けていない新鮮な岩石試料について岩石学的および地球化学的研究を行い,太古代後期の地球表層環境を復元すること,とくに酸化大気の出現時期を特定することを主な目的とした. 本年度は,縞状鉄鉱床の成因とその化学組成から推定した先カンブリア時代の海洋環境変動に関する重要な論文をGeological Society of America Memoirに2本発表した.また関連する研究成果を國際学術雑誌のResource Geology(2006インパクトファクター=1,133)から特集号(Special Issue: Seafloor Processes and Related Mineralization in the Panthalassa: The Phanerozoic Rebords from the Japanese Accretionary Complexes- Part II)を刊行し,4本の論文を発表した.また関連する研究として,現世の中央海嶺の熱水変質岩についての研究をMarine Geology (2006インパクトファクター=2.029)に発表した.さらに,太古代の深海の海洋環境を推定するための指標として,海底の熱水変質岩のU/Thが極めて有効であることを見出し,地球科学分野で最も重要な国際誌であるEarth and Planetary Science Letters(2006インパクトファクター=3,887)に発表した.
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