研究概要 |
難分解性で、生物濃縮性を有する天然由来ハロゲン有機化合物の起源調査を行うために、日本近海からミクロネシアおよびオセアニアにかけて、海綿、魚介類のサンプリング調査を実施し、その化学分析を行い、以下の成果を得た。(1)日本の市販鯨肉および座礁した鯨類の体内にハロゲン化ビピロール類および臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)類似物質が蓄積していることがわかり、その成分の化学合成により構造的特徴を明らかにした。その残留濃度ば人為起源残留性有機汚染物質(POPs)と同程度であった。(2)これらの天然由来ハロゲン化合物は、日本入母乳(65試料)中で、PBDEと同レベルで検出された。日本近海の魚介類(サメなど)でもPOPsと同レベルで検出されるため、その発生源を追跡するために、東アジア、ミクロネシアおよびオセアニアを拠点として魚介類、海綿などをサンプリング(約300点)し、分布図の作成を試みた。(3)ハロゲン化ビピロールのうち、1-methy1-1',2-bipyrrole系の塩素化合物はオセアニア(オーストラリア東側海域)の魚介類に豊富に分布し、一方で、1,1'-dimethy1-2,2'-bipyrrole系の臭素化合物は沖縄以北の日本近海に局在した。臭素化ジフェニルエーテル系は太平洋島嶼の魚介類のほとんどから検出され、とくにパラオ産海綿から最大2%含量の臭素化ハロゲン化合物が検出されたことから、海綿由来のPBDE類似化合物が、生物濃縮し、海産物食品を通じてヒトへ暴露されることが示唆された。ミクロネシア圏の魚介類から天然由来ダイオキシン類似化合物も検出され、これらの食物連鎖による濃縮ルートの解明と影響評価が課題となる。
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