研究はヒ素除去モニタリングを適正技術を用いて行う「技術開発」と、それを用いて住民の支払い意志額の向上、行動変容の喚起という工学・社会学の両面からアプローチすることを特徴としている。平成17年度は研究初年度であるため現地側の研究協力者と共にバングラデシュの農村部において現地調査を行い、調査対象村の確定と研究のベースラインデータの取得に努めた。現地調査は平成17年9月に第一回現地調査を8日間、平成17年12月に第二回現地調査を7日間行った。第一回の現地ではヒ素対策事業を行っているJICAにおける情報収集を行った他、ヒ素対策を行っている現地NGOの「NGOフォーラム」や「SPACE」等のプロジェクトサイトを多数視察し、バングラデシュにおける地下水のヒ素汚染による現状と既存の対策の把握に努めた。また第二回調査では現地住民のヒ素問題に関する意識を把握するため住民を小学校等に集合してもらい集団ヒアリングを行った。その際にグアバ葉を用いて鉄・ヒ素を除去する手法のデモンストレーションを行い、その前後における住民の支払い意志額の変化を調査した。 このような成果を踏まえて平成17年10月28日に国際開発学会の国際環境協力研究部会の講演会として研究成果発表会を行った。この発表会の目的は本研究課題の重要性と研究の進捗状況を多くの国際協力に携わっている専門家に公表することであった。発表テーマは北脇秀敏が「適正技術を用いたヒ素除去モニタリングシステムの効果」、橋本崇史(福士謙介代理)が「ヒ素汚染土壌の微生物による浄化プロセス」、地紙広(元JICA専門家)が「バングラデシュにおける砒素問題について」である。
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