研究課題/領域番号 |
17404019
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
片山 和俊 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (10015290)
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研究分担者 |
尾登 誠一 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (60152550)
清水 真一 東京芸術大学, 大学院美術研究科, 教授 (70359446)
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キーワード | 中華人民共和国 / 客家 / 土楼 / 広東省 / 福建省 / 江西省 / 民居 |
研究概要 |
今回の調査は中国・広東省東北部、福建省と江西省との省境近くの街、英徳、翁源、始東、河源付近に点在する客家民居を調査対象とし、実測及び聞き取りによるサーベイを行なった。 今回調査対象とした民居の特徴は、居住する機能に加え、紛争時に砦、要塞としても機能するようにつくられていることである。建物の四隅が高く物見櫓のような形体をしており、壁には攻撃のための銃丸(弓矢等を使用した)が開けられている.普段住民は周辺の比較的開放的は家屋(これも土楼)に居住しながら農業や牧畜に従事し、有事になると要塞化した建物に立てこもり、事に備えたようである。今回の調査でも昨年と同様、集落及び民居を実測。図面化し、記録した。その上で、昨年度調査した福建省北部の客家民居の住居形式と比較し、客家の民が遷移の過程でどのように生活様式を変化させたのか、考察した。このことについては、本助成最終年度となる来年度、最終報告をする。 今回の調査においても、建築的視点に留まらず多角的に調査対象を把握するため、上海復旦大学、李双龍助教授が同行した。社会学者である同助教授は、多民族国家、中華人民共和国における少数民族の生活のありようについて精力的に調査した。 昨年の調査でも感じられたことであるが、中国の近代化の波は今回調査対象としたような地方の各地域にもおよんでいる。人が住まなくなり荒廃したままにされる民居がある一方で、観光資源として民家園となり公開されている集落もある。宿泊施設として改築中の民居もあった。従来、客家民居に見られた、風土と生活が一体化したような風景は失われつつある。しかしこのような保存のありかたも、「貴重な文化遺産を残す」という意味においては、有効なひとつの方法かもしれない。 調査団一行は、広東省東北部を調査した後、上海へ移動し、共同研究者李双龍助教授の勤務校、復旦大学でシンボジュームを行なった。シンポジュームには、復旦大学、胡志祥教授(博物学)、上海同済大学、蔡リン助教授(社会学)及び上海の学生30名程が参加し、活発な意見交換がなされた。その中では、我々がこれまで行なって来た研究調査の成果を発表するとともに、客家民居の未来のあり方についても議論された。将来に向けて、さらなる日中学術交流の礎を築くことができた。
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