研究概要 |
環境負荷低減を目的とする資源確保達成のためには、(1)地質学的資源分布特性の的確な把握、(2)適正な資源量評価、(3)有用資源素材の鉱物化学的(ミクロ的)分布特性の把握等が重要な研究内容となる。(1)〜(3)の課題が究明されることにより、効率よく資源確保(回収)が達成され、廃棄物削減や使用エネルギー削減に繋がり環境負荷低減に大きく貢献する。本年度は、新疆ウイグル天山山脈西南部域に分布する伊守(イリ)鉱床区の阿希(アシ)金鉱床と天山山脈北西部域に分布する哈図(ハト)金鉱床、天山山脈東端域の黄山Ni鉱床等の資源(量)評価のために、資源の分布特性の詳細を究明した。阿希金鉱床は伊〓県北約30kmに位置し、1988年に発見された。金埋蔵量は50.46t、随伴銀84.74tと見積もられている。分析に供した鉱石の金品位は平均15ppmであったが、白濁珪化変質鉱石の中には80ppm程度の品位を示すものもあった。金鉱物はエレクトラム(Au,Ag)のみ確認されたが、金に対する銀の比率は極めて低く殆どが自然金と同定できる。哈図金鉱床では、古生代地層に貫入した花崗岩質岩石に随伴する石英脈中に金が鉱化している。この鉱床は、随伴硫化鉱物は極めて少量で、エレクトルムの組成は自然金に等しい。また、鉱石中の金品位も200ppm程度を示すものもあり、局部的に高品位鉱が存在する。黄山鉱床は、ペントランド鉱、磁硫鉄鉱、黄銅鉱、キューバ鉱、黄鉄鉱を主要構成鉱物とするNi鉱床である。ペントランド鉱は(Fe,Ni)_9S_8を理想組成とするが本鉱床ではCoを含有するのが特徴である。また、NiそれにCoは随伴Cu-Fe-S系鉱物中にも最大でそれぞれ2000ppm程度固溶する。以上の地質学的およびミクロの観点からの資源分布特性を基にして資源評価が、今後解明されるべき重要な課題である。
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