研究概要 |
1.巣探し行動の観察 ヘルシンキ(フィランド)のセウラサーリ島にて、Bomubs hypnorumとB.lucorumの巣を一つずつ発見した。残念ながらどちらの巣についても、地中の複雑な構造によって、巣を掘り出すことはできなかったが、十分量の遺伝子サンプルを得た。B.hypnorumは巣の乗っ取りをすることなどが知られており、マルハナバチの営巣行動や巣内の遺伝解析をする意味で、大変重要なサンプルになる。現在B.hypnorumのワーカーのDNAマイクロサテライトの結果を解析中である。 2.採集した巣の解析 入笠山にてミヤママルハナバチの巣を2つ発見し、掘り出すことに成功した。掘り出された巣は研究室でその後も飼育を行った。残念ながら1つの巣の女王がすぐに死んでしまい、巣はあっというまに崩壊したが、もう1つの巣については、繁殖虫の生産は行われなかった。1月まで飼育することができた。本来入笠山では8月終わりにはミヤママルハナバチの巣は崩壊してしまうことから、餌資源さえ続けば、ミヤママルハナバチはより長く巣を持続できる可能性を示したことになる。 3.巣からの採餌行動の連続撮影装置の構築 上記1,2,および下記4.の項目について集中的に研究を行ったため、この項目については進展は得られなかった. 4.巣場所推定アルゴリズムの構築 個体間の遺伝変異を示す少数データから、巣数推定を行うアルゴリズムを確立した(Kokuvo et al. 2007)。このアルゴリズムを用いて、北海道平取町でサンプルしたセイヨウオオマルハナバチの女王の由来する巣数を推定し、かなり多くの巣からこれらの女王が逸脱していることを明らかにした(Kokuvo et al.in press)。また、このアルゴリズムの精度をより高める工夫を行い、実データとシミュレーションデータで、アルゴリズムの妥当性を検討した(Kokuvo et al. in prep.)。
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