研究課題
本研究では、マメ科の寄生生物(種子捕食性昆虫であるマメゾウムシ科)と共生生物(根粒菌)を対象に、「利用し利用される関係」の相互作用ネットワークが、どのような進化的過程を経て成立したかを、海外調査と分子系統解析により解明した。(1)マメ科-マメゾウムシ科の系統対応(A)メキシコの野生マメ科-マメゾウムシ科について(嶋田)嶋田と院生の加藤はメキシコのベラクルス州、サン・ルイ・ポトシ州、ケルタロ州で、野生マメ科の寄主植物の豆果を採集し、羽化するマメゾウムシ科昆虫の系統対応を調べた。その結果、Acacia属-Mimosestes属やSennna属-Senius属、Convolvulce亜科-Megacerus属など、寄主植物の上位分類群とマメゾウムシの属とでおおまかな対応が見られた。これらを、産卵ギルドの特性を分子系統の上に乗せて種間比較している。(B)アジアの栽培マメ-マメゾウムシ科について(津田、徳永)津田はセコブマメゾウムシ属における乾燥豆利用を維持させた候補要因(気候、寄主植物、共生菌、系統)について分子系統樹の枝長を考慮して検定した結果、祖先形質の乾燥豆利用特性が、乾燥地でインゲンマメ亜連の利用によって維持されたことが示された。徳永は中国の成都と西昌を訪れ、穀物貯蔵庫や地方の市場をめぐり、マメゾウムシ群集を採集し、現在各地域系統事に実験個体群を確立している。特に西昌では、通常成育できないはずの大豆で生活環を閉じているアズキゾウムシの採集に成功した。(2)マメ科-根粒菌の系統対応(伊藤、青木)マメ科と根粒菌共生系における宿主特異性進化機構を分子生物学的に解析した。根粒菌の持つ根粒形成(nodulation)に必須な遺伝子群(nod遺伝子群)のうち、宿主特異性決定に重要なnodD遺伝子の野生植物からの単離に成功している。ゲノム読了した原核生物3百種の全遺伝子配列を用いマメ-根粒菌共生関連遺伝子の網羅的解析プログラムを開発、根粒形成システムが現在主流にあるリゾビア以外に起源することを示し、同時に多数の新規共生遺伝子の共生アイランド外における存在を推定した。
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Population Ecology 48・1
ページ: 59-70
Heredity 95
ページ: 228-234
Advances in Ecological Research 37
ページ: 37-75
Research Signpost, India (in press)