研究課題/領域番号 |
17405010
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
幸田 正典 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192052)
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研究分担者 |
中嶋 康裕 日本大学, 経済学部, 教授 (50295383)
宗原 弘幸 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (80212249)
狩野 賢司 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40293005)
渡辺 勝敏 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (00324955)
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キーワード | 共同繁殖 / 協同的一妻多夫 / 社会進化 / 雌雄の対立 / 雌による操作 / 血縁淘汰 / 脊椎動物 / 精子競争 |
研究概要 |
タンガニイカ湖シクリッド魚類の共同繁殖がどのような要因で進化してきたのか、非血縁型ヘルパーを持つジュリドクロミスでのヘルパー除去実験、さらに長期観察を念頭においた長期の生活史観察をめざし、個々の繁殖群での個体がどう変化するのかを把握すべく、多数個体の計測及び個体識別を行なった。20年度以降も継続調査の連びである。 脊椎動物の協同繁殖の進化過程には、オスの代替繁殖戦術との関連が重要であるとの立場から、オスが4パターンもの戦術をとるテルマトクロミス・ビッタータスとテンポラリスでの、特にパイレーツ戦術を中心に戦術間での対抗戦術の研究を行った。いずれもその多型は成長にともない同じ個体か変化させており、条件付き戦術であることが明らかにされた。この点は一妻多夫における雄が条件付き戦術であるのと同じである。 また今年度、宗原はミトコンドリアDNA系統解析から、ジュリドクロミス属、カリノクロミス属(以上、協同的妻多夫)とテルマトクロミス属(縄張りオス、スニーカーオス、パイレーツオスなどオスの代替繁殖戦術が多様)が単系統であることをほぼ確認した。我々が注目しているランプロロギ族魚類のなかでも、これら3属が単系統である事は、オスの繁殖戦術の多様性と協同的一妻多夫の密接な関係を裏付けるものとなる。 また、J.トランクリプタスを用い、オスは何に基づき自分の父性を認識するのかという、今後大きく注目されるであろう行動実験研究も行った。これからα♂とβ♂でその基準が異なることなど、大筋が明らかにされた。この研究は、野外で得られた協同繁殖での諸仮説が飼育実験で効果的に検証できることを示している。鳥類やほ乳類といった陸上脊椎動物ではこのような実験検証の困難さを考慮するとこの研究結果の持つ意味は極めて大きいといえる。 ビッタータスの代替繁殖戦術についてはその一部を、ジュリドクロミスについても、雌の操作にともなう精子競争の論文をまとめた。
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