中国雲南省においてフタバガキ科植物の中国固有種と自生種、およびその集団の現地調査を、中国科学院昆明植物研究所との共同により実施した。調査期間は、同研究所とのスケジュール調整の都合で平成18年3月11日から25日とした。調査には、同研究所と関係があり今回の共同研究の実現に尽力した東京農業大学教授(元国立科学博物館筑波実験植物園園長)・小西達夫博土に研究協力者として同行を願った。 調査は雲南省西双版納自治州にある中国科学院西双版納熱帯植物園を拠点とし、同植物園に収集されている同科植物から分子解析用の葉片資料を採取し、同時にさく葉標本を作製した。サンプリングできた15種は、中国に分布する同科のほぼ全種を網羅しているので、大きな成果と言えるであろう。また、周辺地域の自然林におけるフタバガキ科集団の現状を調査したが、自然林における植物の採取は厳重に禁じられているため、サンプルの採集は断念せざるを得なかった。この調査では中国固有の2種につき、実地調査と情報収集を行うことができた。1種については集団の実態を実地観察でき、分布域は限られるものの比較的広く、かなりの個体数が残されていることがわかった。もう1種については自生地を遠望するにとどまったが、自生状況の情報を得た。自生地はきわめて限定された地域であり、個体数も少なく、厳重な保護が必要なことがわかった。 今後、採取したサンプルの解析および研究は、昆明植物研究所との共同で行うことで合意している。両国の研究機関の間で協定を結ばない限り中国からの植物の持ち出しは厳重に禁じられており、当面はDNA抽出を現地側が、その後の解析を日本側が行うことで合意している。また、研究協定の締結を準備中である。
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