研究概要 |
平成17年10月,研究協力者三名とともに台湾を訪問し,台灣國立自然科學博物館(台中)などで,ナガスクジラ科鯨類標本12個体について形態学的ならびに分子生物学的な種判別を行い,ツノシマクジラ(Balaenoptera omurai)7個体,ニタリクジラ(B.brydei)1個体,カツオクジラ(B.edeni)2個体,ミンククジラ(B.acutorostrata)2個体を確認した.研究実績は以下のように要約される.A.分子生物学的調査:調査標本について分子生物学的研究用の軟部組織,あるいは硬組織からDNAを抽出し,ミトコンドリアDNAのD-loop及びCyt-b領域のPCRを行って,シークエンスを決定した.B.形態学的観察:頭骨調査を行ない,次項の要領で撮影するデジタル画像に,構成骨の境界を描き入れて頭骨図を作成した.C.計測,写真撮影:計測法と写真撮影については,新たにCBL(頭骨基底長)と左右眼窩の最高点で決定される基準面を設定し,これによって計測と,写真撮影を行った.D.収集当時の写真により標本個体の外部形態の特徴を総括し,発見地点,発見時期などの付帯データをまとめた.E.上記のデータを整理し,外部形態(体色パターンを含む),骨形態(計測値を含む),ミトコンドリアDNAシークエンス,発見地情報に関するデータセットを作成した.F.平成17年8月に,宮崎市で,我が国で5例目(標本としては3例目)のB.omuraiの漂着があり,急遽現地に赴き調査し,平成18年1月には標本化作業が行われている京都市の標本業者に赴き,頭骨の追加調査を行った.G.平成18年2月には,國立台灣大學の周教授を招聘し,タイプ標本の再検討と結果の公表形態について協議した. 注:国内協力者は大石雅之(岩手県立博物館),田島木綿子(テキサス大学),栗原望(名古屋大学大学院博士課程在学中)の三名である.
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