研究課題/領域番号 |
17405020
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤島 政博 山口大学, 大学院理工学研究科, 教授 (40127783)
|
研究分担者 |
道羅 英夫 静岡大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (10311705)
|
キーワード | ゾウリムシ / ホロスポラ / シンジェン / 核内共生細菌 / 性的隔離 / 共進化 / 細胞内共生 / 地理的隔離 |
研究概要 |
原生動物繊毛虫類のゾウリムシ((Paramecium caudatum)には、syngenと呼ばれる交配反応の有無で生殖的に隔離されたグループが存在し、種分化の初期段階と考えられている。ゾウリムシは海水では生存できず風で飛ぶシストも形成しないため、syngenの分布と進化は大陸の移動と密接な関係があると予測される。一方、ゾウリムシの核内共生細菌ホロスポラ・オブツサの増殖と維持はsyngen特異的であり、共生によって宿主をストレス耐性にさせ、宿主を生存に不適な環境でも生存可能にする。この事実は、syngenとHolosporaが共進化していることを示し、Holospora依存性のゾウリムシが出現している可能性が予測される。本研究は、野外採集によって大陸移動による地理的隔離時期とsyngenの進化の関係の証明、Holosporaとゾウリムシとの共生がsyngenの進化のどこで成立したか、Holospora依存性のゾウリムシの発見を目的にして行っている。2006年度は、国外ではスウェーデンとオーストラリアでゾウリムシの野外採集を行い多数のゾウリムシを採集した。現在、クローニングした細胞の形態的特徴、syngenの標準株との交配反応性の有無をもとに、種とsyngenの同定を行っている。ホロスポラを維持した細胞は2006年度は採集できなかった。 一方、ホロスポラの感染によって宿主に及ぼされる変化で、これまでに知られていなかった変化を発見した。感染後、短時間でホロスポラ・オブツサの63kDaのペリプラズムタンパク質が宿主大核内に分泌され、さらに、ホロスポラの遣伝子発現をともなって、このタンパク質が菌体外に合成・分泌されて宿主核内に充満し、増殖型に分化する直前に分泌が止まり核内から消失することが明らかになった。このタンパク質の遺伝子をクローニングし、推定のアミノ酸配列のホモロジー検索を行ったが既知のタンパク質とのホモロジーのない新規タンパク質で機能は不明である。この現象は現在論文執筆中である。
|