研究概要 |
原生動物繊毛虫類のゾウリムシ(paramecium caudatum)には,syngenと呼ばれる交配反応の有無で生殖的に隔離されたグループ歩存在し,種分化の初期段階と考えられている。ゾウリムシは海水では生存できず風で飛ぶシストも形成しないため,syngenの分布と進化は大陸の移動と密接な関係があると予測される。一方,ゾウリムシの核内共生細菌ホロスポラ・オブツサの増殖と維持はsyngen特異的であり,共生によって宿主を各種ストレスに耐性にさせ,宿主の生存に不適な環境でも生存可能にする。この事実は,syngenとHolosporaが共進化することを示し,Holospora依存性のゾウリムシが出現している可能性が予測される。本研究は,野外採集によって,大陸移動による地理的隔離時期とsyngenの進化の関係の証明,Holosporaとゾウリムシとの共生がsyngenの進化のどこで成立したか,さらにHolospora依存性のゾウリムシの発見を目的にして行った。 12月上旬に,1週間,オーストラリアのメルボルン近郊のグリーンマウンテン(温帯雨林)およびタスマニア島のクレイドルマウンテン国立公園内の河川で,少量の湖沼の水をとり,その日のうちに宿舎で実体顕微鏡を使って観察し,ゾウリムシを探し,4細胞を検出してクローニングした。研究室では増殖させたクローンの一部を10度のインキュベータで保存し,残りをフォインゲン・ファストグリーン染色して細胞核の特徴を観察して種の同定を行った。全て,P.aurelia speciesであった。どの種かは,ポーランド科学アカデミーのEwa Przybos博士に同定を依頼中である。 石巻専修大学から,宮城県で採集された4株の分与を受けた。Syngen1と12が2株ずつであった。ホロスポラは維持していなかった。
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