研究概要 |
タイ,バンコック近郊地域の衛星画像データを収集,解析し,土地利用分類,農作物の作付け状況などを整理した.また,バンコックへ赴き,タイ-日本農薬会社,日本貿易振興機構,日本大使館などを訪問し,農薬の使用状況についての詳細な情報を得た.それらの情報に基づき,特にバンコック西側のチャオプラヤ平原において野菜が多く栽培されており,多量の農薬使用が懸念されたため,その地域の農家を訪問し,農薬・化学肥料に関する聞き取り調査を行った.特に,今年度はアスパラガス農家などを中心に行った.アスパラガスはタイから日本に大量に輸出されている作物の一つである.今回は畑および近隣の河川底質土を採取し,残留農薬分析を行った.その結果,問題にならないほどの低濃度であるが,一部の土壌中に殺虫剤のcypermethrin, chlorpyrifos, endosulfan,殺菌剤のchlorothalonil, azoxystrobinなどが検出された.興味深いことに,endosulfanは主にコメのジャンボタニシ駆除に使用されており,アスパラガス畑では使用されていない農薬であるのに,今回,畑土から検出された.灌漑水中に含まれたendosulfanがアスパラガス畑に散布されて混入したのではないかと考えられたため,灌漑水中の農薬分析を行ったところ,検出限界以下ではあるが,ごく微量,endosulfanが検出された.Endosulfanは土壌から植物中に吸収されやすい農薬ではないので,土壌中に含まれていても問題とはならないが,日本で農薬のポジティブリスト制度が開始され,いかなる農薬も作物中に基準濃度以上に残留してはならないとされたことから,今後,灌概水中などの残留農薬にも注意する必要がある. 次年度は,もう少し系統的に他の作物畑において,農薬・化学肥料に関する調査,分析を行う予定である.
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