S. hermonthica蔓延している半乾燥地域で最も大きな農業被害を被っているソルガムのS. hermonthicaの寄生に対する分子応答を解析した。SSH法を用いてS. hermonthicaが寄生したソルガム感受性品種の根で特異的に発現する30遺伝子を単離した。これら30遺伝子の発現解析を、S. hermonthicaを寄生させたソルガム高感受性品種および低感受性品種の根およびソルガム3品種の葉、さらにはSAおよびMeJA処理したソルガム3品種の根でも行った。これらの解析によりS. hermonthicaの寄生は感受性の宿主の根でJA応答性の遺伝子発現を誘導し、SA応答性の遺伝子発現を抑制することを見出した。このことは、感受性の宿主植物がS. hermonthicaの寄生を病原性微生物によるストレスとしてではなく傷害ストレスとして認識することを示唆している。対照的に低感受品種の根ではS. hermonthicaの寄生によりSAおよびJA応答性の遺伝子の発現が誘導されたことから、低感受性の宿主植物はS. hermonthicaの寄生を傷害ストレスとしてだけでなく病原性微生物によるストレスとしても認識する可能性が示唆された。さらに、低感受性品種での遺伝子発現およびソルガム3品種の根へのSA処理がS. hermonthicaの瘤状組織の形成を阻害したことは、SAに応答して発現する遺伝子がS. hermonthicaに対する宿主抵抗性に関わることを示唆している。また、S. hermonthicaが根に寄生したソルガム個体の葉で3品種に共通して発現が誘導された遺伝子は2つだけであり、これらの遺伝子はシグナル伝達に関わるshock proteinおよびHspをコードしている遺伝子と相同性を示した。このことは、これらの遺伝子が低温や高温ストレスと同様にS. hermonthicaの寄生に対する宿主の個体全体での応答に関与することを示唆している。
|