研究概要 |
平成18年4月23日〜平成18年5月13日にかけてニュージーランド国北島トンガリロ国立公園ならびに同国南島ネルソン湖国立公園,アーサーパス国立公園,ウエストポート周辺のナンキョクブナ林で外来菌根菌であるベニテングタケの発生調査を行い新たな侵入サイトの探索を行った。また,昨年度の調査で設定したコドラートにおいて植生調査ならびに子実体が確認できる菌類の採集調査を行った。ネルソン湖国立公園内のべニテングタケ発生地点コドラートならびに未発生コドラート内のナキョクブナの根部を採取し,顕微鏡的形態差異から形成菌根の分類ならびに種数の比較を行った。また,一部菌根については共生菌の分離を行った。現地調査の結果,ベニテングタケのナンキョクブナ林への侵入サイトは,遊歩道脇や道路整備工事などの人為的影響を受けている場所が極めて多いことが明らかとなってきた。さらに,侵入地点と非侵入地点のナンキョクブナの菌根種数を比較したところ,侵入地点では5種類程の菌根しか認められなかったのに対し非侵入地点では10種以上の菌根が認められた。ベニテングタケ侵入定着には,何らかの生態的撹乱が誘因となっていることがつよく示唆された。また,ニュージーランドでは景観的ならびに生態的配慮から原植生を構成する樹種を用いて公園や路側の植栽をしばしば行おうが,このようなナンキョクブナ植栽樹からベニテングタケの発生が認められた。植栽木のナンキョクブナはナーセリーによって育苗されており,ナーセリーにおけるベニテングタケ感染ならびに移植による生育地の拡大の可能性も考えられた。なお,本調査研究の概要ならびに得られた知見については平成18年11月23日国立科学博物館で行われた日本菌学会公開講演会「菌類にもある外来種と絶滅危惧種問題」の中で紹介した。
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