研究概要 |
本研究では,ニュージーランドにおいて外来菌根菌ベニテングタケ(Amanita muscaria)が同地固有種であるナンキョクブナ科樹種にどのようにして適応,ナンキョクブナ林に侵入,分布を拡大しているのかを明らかにするとともに外来菌根菌の侵入により同地の自然生態系がどのような影響を受けるのかを明らかにすることを目的としている。2005年から2006年度に実施した現地調査の結果,ベニテングタケのナンキョクブナ林への侵入は,人為的影響を受けて生態的撹乱が起きているところで顕著であることが明らかになってきた。そこで,このような地点において他のきのこ相がどのような影響を受けているのかを調べるため,同国で比較的よく分類学的研究が進んでいるアンモニア菌群に着目し,2007年度の現地調査を進めた。マツ科のラジアータマツPinus radiataの植栽林,フトモモ科のマヌカLeptospermum scoparium疎林,ナンキョクブナ科・属Notofagus spp.の林内に各2カ所,合計6カ所のプロットを設け,2007年1月に窒素添加よる発茸刺激を行い,発生子実体の調査は2007年5月におこなった。得られた子実体はランドケアリサーチ研究所で乾燥標本とした後,持ち帰り,同定ならびに遺伝子解析を進めている。また,2005年から2006年度に実施した現地調査で得た,きのこ利用昆虫群集の解析をおこなった。その結果,ニュージーランド固有種のある種キノコバエが,昆虫に対して極めて有毒で菌食性昆虫が利用しづらいベニテングタケを積極的に利用していること,ナンキョクブナ林のべニテングタケ発生地と未発生地においては,菌食性昆虫相が異なっていることが明らかとなった。
|