研究概要 |
1999年台湾で発生した地震は甚大な人的・物的被害をもたらした。この地震で台湾中央部の山地では多数の斜面崩壊・土石流が発生した。斜面崩壊や土石流により生産された土砂は大雨のたびに流出して土砂災害を引き起こしている。本研究は,現地調査に基づいて,地震後の地形の変化を明らかにし,土砂災害の予測について検討することである。得られた結果をまとめると次の通りである。 1.台湾中部を流れる清水渓支流石盤鼓渓の乾坑渓流域(面積10.76km^2)の地震直後の空中写真を判読した。流域内には131箇所以上の斜面崩壊地が判読され,崩壊面積の合計は1.35km^2,崩壊面積率は12.5%であった。生産された土砂は大雨のたびに流出し,土砂災害を引き起こすと同時に河川地形を大きく変化させている。 2.乾坑渓流域において,標高800〜1100m区間に19本の横断測線を設け,毎年,地形測量を行った。その結果に基づいて地震後の斜面や河道の長期的な地形変化を定量的に明らかにした。 3.乾坑渓流域では,地震前は土石流が年に1回程度発生していたが,地震直後は年に20回以上の土石流が発生した。河川沿いには新旧の土石流段丘が観察される。台湾では大きな地震が過去に繰り返し発生しており,地震による崩壊の発生は山地や河川の地形を変化させるおもな原因となっている。 4.地震後の土石流の発生や流出特性を把握するために,乾坑渓流域において土石流観測カメラによる観測を行った。地震から8年が経過した2007年にも比較的規模の大きな土石流が発生し,その映像が撮影された。
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