ブラジル連邦共和国パラー州内陸部地域の農場を訪問し、基礎データ収集を行った。アマパ州のマカパ近郊入植地、東北地方のマラニョン州およびセアラー州入植地、バイア州沿海地方入植地を調査した。日系団体の協力を得て各地に派遣した調査員が収集したデータを回収し、整理しているところである。この地域の日系農家は、アマゾンにおける持続的開発モデルとして国際的に高い評価を受けている遷移型アグロフォレストリーを開発したトメアスー入植地から再移住したもの、及び日本からの戦後直来移民等が混在している。申請者が1993年、ナイール著アグロフォレストリー教科書に掲載されている事例を含む現地調査を行って以降、15年間全く実態把握が行われていない。調査内容は前年度分に引き続き、申請者が1996〜97年にパラー州トメアスー入植地全戸について行った調査(トメアスー文化協会2002年データ更新)と同じ形式で、作付けインヴェントリーを実施した。農場名、住所、農家構成員・生年月日・職業・最終学歴、所有借入耕地番号・面積・植生内訳(原始林、拓伐済み原始林、二次林、作付け地)、耕地別の作目・作付け年・面積・植付け本数・現存本数・作付け形態(混植単作別)、および動物飼養頭羽数を調べ、農場の歴史、農牧業全般特にアグロフォレストリーに関する農場主の所感・洞察と、作付け・経営体系の特徴について聞き取りを行い、全般的観察結果を記録した。周辺の非日系農家も訪問し、日系からの農業技術移転に関して現場観察をふまえた聞き取りを行った。この地域はとくに、小型日系移住地が点々と分布し、これまで技術情報はアマゾンやブラジル南部の日系移住地に依存してきたが、世代交代が進み、日本就労や後継者の他業種就職により、日本直来移住地の農業活動は低調になっている。一方で、ブラジル南部から内陸部に移住した日系2世による、大規模農業開発も進展していた。
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