研究概要 |
生物のゲノムの全構造解析が各分野で競争して行われ、解析結果が明らかになりつつある。ゲノム解析は種の遺伝学に未利用資源として今後活用するための前段階としても考えられる。複合糖質は主として細胞表層や細胞間に存在し、細胞膜の主要な構成成分であり、ABO(H)式の血液型のような特異的抗原として働いていたり、細胞認識に関わっていることが周知され,我々はフォルスマン糖脂質に非常に興味を持ち,この糖鎖を発現している種としないものがあり、この糖鎖と進化の関連性が指摘された。本研究ではこの糖鎖抗原が発現している種、特に家禽類より、この糖転移酵素をクローニングすることにより、種或いは類縁種でこの遺伝子が保存されているか、またその進化ではどう行われていたかを解明するために、家禽類が生息する国から試料を収集し、その後の解析を行うことを目的として3年目は収集の他に各動物園に依頼を行った家禽類のDNAあるいはRNAからの解析により力を入れて,更にはまとめを行なった. 1,遺伝子の比較;(a)持ち帰った試料のDNAあるいはRNAから既知のマウスあるいはイヌ及び家禽類のダチョウ,ニワトリのcDNAをプローブにして6種の家禽類のゲノムサザンを行った.(b)(a)で得られたゲノムDNAを基に,対応する糖転移酵素の全長を把握する.これは昨年から引き続き行った.家禽類の中でフォルスマン糖脂質を発現する家禽(ダチョウ,ニワトリ)のホモログの解析はほぼ終了した.(c)約20種類の主として野生種の家禽類をこれらの遺伝情報を基に分類し,他の遺伝情報も合わせて,体系化を試みる.これは2年目から行ったが,解析中であるため,十分な情報がまだ得られていない. 2,複合糖質の構造解析;(a) 精製可能な試料(ダチョウ)より有機溶媒抽出,カラムクロマトにより既知の構造と酸性画分からフォルスマン活性を有する脂質の精製と構造解析を行った.MALDITOF/MSとNMR解析により完全構造解析を現在めざした. 以上,試料からの遺伝子の解析と比較的大量に入手できる試料については,複合糖質の解析を併用して解析を進め,最初の目的である体系化に向けて,現在入手できる試料の数を増やすことと,更に複合糖質の完全構造解析に向けて論文化を行なっている.
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