研究概要 |
本研究は韓国及び中国東北地方におけるダニ媒介性動物原虫感染症の浸潤・流行状況を明らかにし、日本の輸入検疫体制強化と韓国及び中国の原虫病診断技術の向上と普及に資することを目的として実施してきた。本年度に実施した研究内容と得られた研究成果は以下の通りである。 1. タイ国における疫学調査 : 中国と国境を接しているタイ国北部の42箇所の牧場より642頭の牛の血液サンプルを採集し、組換え抗原を用いたELISA法にて抗体検査を行ったところ、B. bovisとB. bigeminaに対する抗体保有率がそれぞれ73.8%と69.1%であった。この結果より、ウシバベシア症はタイ国北部地域広く流行しており、本症の制圧対策は当地域の牛の生産性向上に重要であることが示唆された。 2. バベシア症に対する治療法の開発 : バベシア原虫のESTデータベースを作製し、原虫の葉酸代謝経路の必須酵素として知られるDihydrofolate Reductase-Thymidylate Synthase(DHFR-TS)同定し、その性状解析を行った。また、ジヒドロ葉酸レダクターゼの抑制剤(葉酸拮抗剤)として知られているピリメタミン(PYR)、メトトレキセート(MTX)、トリメトプリム(TMP)などを用いてDHFR-TSの酵素活性抑制能を調べたところ、濃度依存性の酵素抑制活性が認められた。さらに、これらの酵素抑制剤の抗原虫作用をin vitro培養系で調べたところ、いずれも原虫増殖抑制効果を示したが、特にMTXがバベシア症の治療薬として有望であることが示唆された。 3. バベシア症に対する予防法の開発 : 人獣共通バベシア症を引き起こすB. microti虫体から, ワクチン候補分子としてBmPO遺伝子をクローニングし、組換えBmPO試作ワクチンのマウスにおける感染防御効果を確認した。
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