研究概要 |
1.学術調査 中国吉林省と雲南省でEleutherococcus属とPanax属、ラオスでcurcuma属植物の資源調査を行い、同時に伝統薬物を収集した(植物223点、生薬372点)。 2.遺伝的・成分化学的多様性 (1)麻黄:モンゴル南部のEphedra属植物はE.sinicaとE.przewalskiiの交配種由来である可能性を、18SrRNA及びtrnK遺伝子の解析から示した。これらはEphedrineよりPseudoephedrineを多く含有した。 (2)刺五加:Eleutherococcus senticosusのtrnK遺伝子における多型と、同種及びE.sessiliflorusを同定するための固有配列を明らかにした。E.senticosusはEleutheroside B、Eを各0.06%以上含有した。 (3)大黄:日本に外来した植物はRheum tanguticum, R.palmatum及びR.coreanumの各1系統であることを中国産同属植物とのmatK遺伝子の塩基配列の比較から明らかにした。 3.薬理作用と活性成分 (1)抗痴呆作用:Eleutherococcus senticosus基源の刺五加のメタノール及び水エキスはin vitroの神経障害モデルで有意な軸索・樹状突起の伸展作用、前シナプス再形成作用及び細胞死抑制作用を示した。アルツハイマーモデルマウスへのメタノールエキスの経口投与により記憶獲得及び記憶保持能力の障害が改善された。Astragalus mongholicus基源の黄耆の水エキスをアルツハイマーモデルマウスへ経口投与した結果、記憶保持能力の障害が改善され、大脳皮質の軸索減少と前シナプス減少及び海馬の前シナプス減少がコントロールレベルまで回復された。 (2)抗C型肝炎ウイルス作用:HCV RNA依存性RNAポリメラーゼの阻害活性を示したタイ伝統薬物Tub-tim(Punica granatumの材)から活性成分としてlinoleic acid、3,3',4'-tri-O-methylellagic acidを単離、同定した。
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