研究概要 |
従来は抗菌薬によって治療で可能であった細菌感染症が、多剤耐性菌の出現によって臨床上大きな問題となっている。本研究では、ベンガル地域での重症下痢症患者から分離しに下痢症原因菌がどの程度耐性化しているか、我が国で分離された下痢症原因菌がどの程度耐性化しているか、さらに分離された薬剤耐性菌にどのような薬剤耐性遺伝子が関与しているか、特にインテグロンの関与について調べることを目的とした。 インドカルカッタで分離されたコレラ菌133株についてインテグロンの存在について調べた結果、クラス2及びクラス3は全ての株で陰性であったが、クラス1インテグロンは、14株で陽性あった。その中には、トリメトプリム、アミノグリコシド、ベーターラクタムに耐性な遺伝子がコードされており、1990年代前半に分離されたO1コレラ菌で高頻度に存在していた。Non-O1,non-O139コレラ菌に関しては、年度に関係なく約20%の割合で陽性であった。O139コレラ菌で、1992年の分離株で初めてクラス1インテグロンが検出された。一方、赤痢菌に関しては2002年に分離されたShigella dysenteriae type1がフルオロキノロンを含む多剤耐性であり、クラス1とクラス2インテグロンが多剤耐性化に関与していた。クラス2インテグロンには、トリメトプリム及びアミノグリコシドに耐性な遺伝子がコードされていた。クラス1インテグロンは、3'-CSを欠く不完全型であり、S.flexneriで見つかっていたアンピシリン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリンに耐性な遺伝子を持つShigella resistance locus(SRL)であった。SRLがS.dysenteriae type1で初めて見つかった。一方、我が国の小児下痢症患者から分離されたCampylobacter jejuniは、一部にマクロライド耐性菌が見つかったが、フルオロキノロンには感受性であり、その他の抗菌薬に対してもおおむね感受性であった。
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