研究概要 |
我々は新興ロタウイルス株のトルコにおける出現状況を明らかにするため、百都アンカラのガージ大学医学部附属病院とアンカラ病院の入院及び外来における5歳未満の急性下痢症患者322人より採取された便検体(322検体)について以下の検討を行った。A群ロタウイルス抗原ELISAにて、ロタウイルス感染陽性率は39.7%で、年齢別では12-17ヶ月にピークがあった。陽性検体よりロタウイルス二本鎖RNAを抽出し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるelectropherotypeの同定を行ったところ5つのelectropherotypeが確認できた。検討できた39検体のelectropherotype別では、27例(E2),8例(E1),2例(E3),1例(E4),1例(E5)であった。G1、G9の一部ではP[6]やP[4]またはP型判定不能のものも見受けられた。ゲノタイプ別では、GIP[8]が最も多く、G9P[8],G2,G3,G4が続いていた。気候が温暖なアンカラでのロタウイルス感染には季節性は無く、G9の広がりは2005年ごろより急速に拡大したことが予想された。今回の研究期間内に、我々はロタウイルス感染による腸重積症の1例を経験し、現在論文を投稿中である。 さらに、ロタウイルスの抗原血症は病原性発現にとって重要な問題である。今回我々は65例のロタウイルス感染陽性者と100例の陰性者の併せて165検体の血清をELISA法で検討した。便中にロタウイルスが検出されたもののうち40%で、抗原血症がELISA法で陽性となった。興味深いこと便中にロタウイルスが検出されなかった患者の22%でも血清抗体がELISAにより検出された。この事実は、ロタウイルスの感染が便中の抗原ELISAで検出するよりも、はるかに高い頻度で感染の広がりが起こっていることを示唆する。来年度も継続して、患者からの検体を収集することで、研究を継続していく予定である。以上のように我々は世界的新興ロタウイルス株G9がトルコにおいても重要なものであり、同時にロタウイルは遺伝子変化により通常の解析法が無効になるなど常に進化を遂げていることを明らかにした。
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