研究課題/領域番号 |
17406014
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
仲井 邦彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (00291336)
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研究分担者 |
佐藤 洋 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40125571)
亀尾 聡美 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (40312558)
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キーワード | メチル水銀 / 残留性有機汚染物質 / 魚摂取 / 不飽和脂肪酸 / 健康リスク / PCB |
研究概要 |
環境残留性有機汚染物質(POPs)およびメチル水銀は環境中で生物濃縮され魚介類に蓄積し、ヒトは魚摂取を介してこれらの化学物質を取り込む。このため、魚摂取の利点と考えられる栄養学的側面と、魚摂取に伴う健康リスクの両者に焦点を当てた疫学調査が海外の各所で進行中であり、フェロー諸島での調査およびセイシェル共和国の調査、が着目される。我が国でも分担研究者の佐藤らが同様な調査を東北地区で進めてており(厚生労働科学研究)、国際比較が着目される。特に、POPsやメチル水銀による健康リスクを低減させるには魚摂取の抑制が効果的であるが、同時にPUFAなどの栄養素摂取も減少しリスクトレードオフが生じる。そこで本研究では、海外の先行研究と連携し化学物質曝露と魚摂取およびPUFAのリスク評価を目指した。 PUFA摂取の効果を検証するため、新生児行動評価の結果を目的変数、PUFAを説明変数として重回帰分析を行ったところ、PUFAの効果は共変量として毛髪総水銀を加えた時に初めて統計学的に正の影響が示された(メチル水銀は負の影響)。また、PUFAの摂取量を維持しながら、摂取する魚の種類を選別することでメチル水銀の摂取量を効果的に低減することができることも推定された。一方で、PCB曝露について、臍帯血PCB濃度が増加すると生後42ヶ月におけるIQの値が有意に減少することが示され、PCB曝露の健康リスクがあらためて強調された。その際に、共変量として魚摂取量を組み込むと魚摂取量自体も負に影響した。この1つの解釈としてPCB以外のPOPs曝露の影響が懸念され、母乳を用いたPOPs分析を進めた。以上の知見について、海外の先行研究との比較を実施したが、疫学調査の間で一致する点、一致しない点などが示され、魚摂取のベネフィットについても確定的な結論にはいたらなかった。化学物質曝露のリスクはそれぞれの調査地点で異なることが示され、わが国独自の調査の重要性があらためて示唆された結果と考えられた。
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