研究概要 |
* 西ジャワ農村部において,小学校学童およびその母親より得た尿試料(約80組)について,有機りん系農薬の4種類の代謝物を測定した.濃度レベルとしては,同地域において既に得られていたデータと同程度であると思われた.母子間の代謝物濃度の相関は強いものではなかったが,母子ともに高値を示す世帯が複数認められ,何らかの原因で曝露リスクの高い世帯が存在するものと思われた.これを富山県の学童と比較すると,むしろ富山の方が高値であった.ハイリスク世帯のリスク要因,前回得られた地域差との比較,両国の差の原因・意義などについて,来年度検討する予定. * 熊本県立大・有薗氏の協力を得て,同地域において乳児を持つ母親より得られた母乳ならびに,集落内の養魚池で獲った魚について,LC-MSを用いてDDTの測定を行った結果,いずれのサンプルからも微量ながらDDTが検出された.preliminaryな結果ではあるが,すでに農薬としての使用が禁止されている同地域でも,依然生体には曝露があることを示している.これが過去の残留を反映するのか,現在の[違法な]使用を反映するのかは明確でないが,継続的モニタリングが必要である. * カウンターパートであるインドネシア,パジャジャラン大学生態学研究所ならびに医学部の協力を得て,本年度3月上旬〜中旬にかけ,同地域における農作物の作付け実態と農薬使用の状況について,聞き取り調査を行った.これによって,同地域における農業生産活動の概要を把握し,農薬曝露がどの程度の範囲で起きえるのか,生体試料で得られたデータと照合しつつ解析する.なお,これまでの調査対象地に加え,茶のプランテーションに近く,酪農の盛んな地域についても同様の調査を実施し,農薬使用の集落間差があるか否かを検討する材料を調えた.
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