研究概要 |
ベトナム戦争中に枯葉剤を散布された地区住民の生体試料(血清、母乳、皮下脂肪)中のダイオキシン類(TEQレベル)濃度が対照とした非散布地区住民より有意に高値であることを我々は既に明らかにしてきたが、ダイオキシン類の各異性体比率の検討では、最も毒性の強い2,3,7,8-TCDDの比率は相対的に低かった。この結果は、従来の報告とは異なる。 そこで、本研究の目的は、土壌・水底等の環境試料、魚類・家禽類等の生態試料、人の血清や母乳をベトナムの汚染地区並びに非汚染地区より採取し、ダイオキシン類の各異性体の比率を明らかにし、相互の関連性について検討することにより、ダイオキシン類の環境汚染源を解明することである。 そのため、2005年8月6日〜19日にかけて、城戸、中川、長沼に研究協力者4名を含めて、生態試料の採集調査を実施した。その結果、撒布地区の人口養殖池から淡水魚12サンプル(Black carpの筋肉組織4、肝臓2、脂肪組織2;Tench の筋肉組織3;Snack headの脂肪組織1) と非撤布地区から2サンプル(Siluridの筋肉組織1、肝臓1)、計14サンプルを採取し、日本国内に搬送した。但し、予定していた家禽類については鳥インフルエンザ流行の影響で、輸入禁止品として許可が得られなかった。また、土壌・水底の環境試料は、事前に名古屋植物検疫所より輸入許可を受けた上で、2006年1月20日〜26日にかけて城戸と5名の研究協力者が両地区に出向き、撒布地区より19、非撒布地区より7、計26サンプルを採取し、日本国内に搬送した。 いずれの検体も現在、超低温冷凍庫に保存しており、今後、一連の環境並びに生態試料の各異性体を含むダイオキシン類の精密分析を実施していく予定である。
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