研究概要 |
平成14-16年度の基盤研究(B・海外)「ベトナムにおけるダイオキシン類環境汚染30年後の生体影響に関する疫学的研究」により、ベトナム戦争中に枯葉剤を散布された地区住民の生体試料(血清、母乳、皮下脂肪)中のダイオキシン類(TEQレベル)濃度が対照とした非散布地区住民より有意に高値であることを明らかにした。但し、この結果より、両群の相違が枯葉剤によるのか、一般農薬によるのかは即断できない。その訳はダイオキシン類の各異性体比率を検討すると、最も毒性の強い2,3,7,8-TCDDの比率は相対的に低かった。この結果は、従来の報告とは異なる。これまでの研究では2,3,7,8-TCDDにのみ注目し、他の異性体比率に着目したものはほとんどない。そこで、本研究の目的は土壌・水底等の環境試料、魚類・家禽類、家畜等の生態試料、人の血清や母乳をベトナムの汚染地区並びに非汚染地区より採取し、ダイオキシン類の各異性体の比率を明らかにし、相互の関連性について検討することにより、ダイオキシン類の環境汚染源を解明するための手がかりを得ることである。平成18年度は、前年までに採取した生体試料の分析を引き続き実施し、母乳・血液の両試料において、5塩化のフラン類の比率が高いという新たな知見を得た。一方、土壌試料は既にベトナムの共同研究者が測定したが、汚染地区の幾つかの試料と非汚染地区のすべての試料が検出限界以下であった。そこで、今回、石川県環境保健センターの協力を得て、再度分析した結果、汚染地区の方が非汚染地区より有意に高い結果を得た。また、汚染地区の幾つかの試料では2,3,7,8-TCDDが高く、これは石川県内の土壌試料では見られない特徴である。但し、汚染地区の土壌試料中の総ダイオキシン類濃度は石川県内の土壌試料中の値と大差のないものであった。
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