研究概要 |
2006年度に入手したベトナム土壌27試料(枯葉剤撒布地区20試料、非撒布地区7試料)中のダイオキシン類分析を、前年度に引き続き今年度も石川県保健環境センターの協力を得て分析した。枯葉剤撒布地区のダイオキシン類濃度は平均値1.9pg-TEQ/g(範囲:0.035-11 pg-TEQ/g)で、非撒布地区の平均値0.38pg-TEQ/g(範囲:0.050-1.9 pg-TEQ/g)より有意に高値を示した。次に、同族体中に占める異性体比率を見ると、2,3,7,8-TCDD)等7つの異性体が両地区間で有意な差を認めた。ちなみに石川県内の土壌と比べると、2,3,7,8-TCDDと1,2,3,7,8,9-HxCDFの2異性体比率が枯葉剤撒布地区で高く、枯葉剤に不純物として含有されていたダイオキシン類の異性体分布の特徴を反映していると推測された。一方、母乳中のダイオキシン類の分析結果は、PCDDsではPCDD、1,2,3,6,7,8-HxCDD、OCDDの異性体がトップになるようなピークが見られるのが特徴で、ピークの高さは塩素数が増えるにつれて高くなっていく。撒布地区のTCDDのレベルは最も高かったが、異性体パターンは、他集団(非撒布地区と日本国内2地区)と似通ったパターンを示した。PCDFsは、1,2,3,4,7,8-HxCDFをトップとした比較的ブロードなピーク(HxCDF全体にわたる)と、1,2,3,4,6,7,8-HpCDFをトップとした比較的大きなピークが撤布地区にのみ認められた。以上の結果より、撒布地区の異性体パターンは特異的であり、枯葉剤による影響が考えられる。これらの成果は、2007年9月に東京で開催されたDioxin国際会議で口頭発表した。2007年11月に城戸がベトナムを訪問し、この結果について報告し、ベトナム側共同研究者と今後の研究計画を検討した。
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