研究概要 |
本研究の目的は、土壌・水底等の環境試料、人の血清や母乳等の生体試料をベトナムの枯葉剤撒布地区並びに非撒布地区より採取し、ダイオキシン類の各異性体の比率や相互の関連性を明らかにすることより、ダイオキシン類の環境汚染源を解明することである。調査は2005年より3年間、毎年8月にベトナムの枯葉剤撒布地区に選定したクワンチ省カムチン村と非撒布地区として選定したハチン省カムフック村で実施した。 環境試料は、ベトナム土壌27試料(撒布地区20、非撒布地区7)を採取し、生体試料としては、母乳156試料(撒布地区84、非撒布地区72)と血液284試料(撒布地区144、非撒布地区140)を採取し、血清は混合して分析した。分析の結果、枯葉剤撒布地区の土壌中ダイオキシン類濃度は非撒布地区より有意に高値を示した。次に、同族体中に占める異性体を見ると、2,3,7,8-TCDDが撒布地区で有意に高かった。生体試料中のダイオキシン類の分析結果では、1,2,3,4,6,7,8-HpCDD、1,2,3,4,7,8-HxCDF、1,2,3,6,7,8-HxCDF、1,2,3,4,6,7,8-HpCDF、1,2,3,4,7,8,9-HpCDFの異性体が撒布地区で有意に高く、PCDDsよりもPCDFsで両地区間の異性体の相違が顕著であり、上記の5つの異性体が撒布地区に特徴的であることを明らかにした。 以上の結果より、土壌試料で2,3,7,8-TCDDは撒布地区の方が有意に高く、また、撒布地区の異性体パターンには特異性があり、枯葉剤による影響が考えられる。
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