研究概要 |
平成19年度の調査は9月と2月の2回実施した。前年9月末に道路が再開通して首都ホニアラとの定期バス交通も再開したことにより,再近代化が急速に進行中であったため,この2回の調査結果は社会不安からの回復過程における近代化の進行の影響を反映するものと考えられる。近くのオイルパームプランテーションが本格的に操業を再開したために新たな雇用が生まれて一家でそちらに移住する人が増え,逆に他の土地からプランテーション労働者として移住してきた人が子供を調査地の学校に通わせるために寄宿させる例も現れたために人口移動が激しくなった。 マラリア感染状況については2回ともActive Case Detectionを実施した結果,前年度にも見られた三日熱原虫優位な傾向ときわめて狭い地域集積性(あるいは家族集積性)が継続していたことがわかった。全体として原虫陽性割合は低下傾向にあり,陽性の場合でも感染強度が弱い人が主になってきた。 WHOQOL-BREFによるQOL評価結果は,前年度には環境面が他の面よりも低いことが特徴的であったが,道路の再開通によって医療資源や市場へのアクセスが向上したために環境面のQOLがはっきりと上昇した。しかし2月には9月よりもやや社会面のQOLが低下し,とくに「とても満足」と回答した人はほぼゼロであった。ただしこのことが近代化の負の側面なのか偶然の変動なのかは今後の検討を要する。 尿検査の結果では,pHが酸性側の人が平成18年度にも回を追うにつれて増加したが平成19年度もその傾向は継続しており,購入食品依存度が高まってきたことと関連していると考えられた。尿のグルコース陽性は皆無であり,生体計測の結果でも肥満あるいは高血圧の人はそれほど多くなかったが,同じ人で比べると体重が増加傾向にある人が多かったので,今後の注意が必要である。
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