【目的】「エイズの女性化」が進行し女性と子どものエイズの多さが顕著であるアフリカにおけるHIV感染児の実態と抗レトロウイルス薬(Antiretroviral:ARV)を用いた治療(ART)の効果を調査すること。 【方法】2004年7月から2007年6月までに18の病院・診療所にアクセスした、HIV陽性母から出生した、あるいは家族にHIV感染がある小児を対象とし、HIV感染の診断(抗体又はreal-time PCR)、臨床ステージ、CD4%、ARTレジメン、治療効果などを調査検討した。 【結果】0-13歳の対象児3365人中、HIV感染が2476人(73%)に確認された。うち32%は母子感染予防対策後フォローを受けていた子(平均生後4ヶ月)で68%は家族のHIV感染診断後に初めて感染が判明した子(平均6歳)である。このうちARTが開始されたのは1042人、レジメンはAZT又はd4T+3TC+NFV又はEFV又はNVPで、1-4ヶ月後に10%に貧血や皮疹等の副作用のため薬剤変更があった。12ヶ月生存率は68%(開始時CD4が<10%)から89%(開始時CD4が10-15%)で、CD4の上昇は+11%(4.2-16)、BMIの上昇は+1.3(0.1-2.6)、ヘモグロビンの上昇は+1.4g/L(1.0-2.4)見られた。またARV治療下の684人中117人(17%)に結核の合併が発見され、そのうち22人は活動性結核であり治療が開始された。 【考察】コートジボワールのHIV感染者57万人(うち小児4万人)のうち8万人にARTを必要とするが現在全国で2万人ほどにARTが開姶された。その中で2000余例のHIV感染小児を診断し治療を開始した成績を示す本研究の結果は、アフリカにおいても小児エイズのARTが実施可能であり、先進国と同様にエイズの子どもの生存率を上げることができるという有効性を示唆している。
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