研究概要 |
武市、藤田により若年男性の突然死という特徴を持つ心臓性突然死に対して、従来から言われていたポックリ病という名称を改めて、心臓冠動脈スパズムに起因する"ポックリ病症候群"(Pokkuri Death Syndrome)という新しい症候群として位置づけることが提唱された(医学の歩み、2006年)。またこの研究期間に"ポックリ病症候群"の原因あるいは危険因子として約2/3の症例に認められる高レムナント・リボ蛋白血症の、生化学的解析がさらに進められた。 高レムナント血症と心臓性突然死の日米比較の実態調査として、米国Tufts大学医学部のSchaefer, E教授との共同研究により、VA-HIT Study2,531例の男性症例のうち、cardiovascular endopints (fatal and non-fatal MI, other coronary heart disease death and stroke)が認められた105例の解析から、米国においても高レムナント血症が心血冠イベントの発症の強い危険因子であることが確認されたが、LDL-C, apoB, apoAIには認められなかった。これはわが国における"ポックリ病症候群"の結果ときわめて近いことが示された。しかしながら、当初予定したCVPath (International Registry of Pathology)のDr.Virmani Rとの共同研究の心臓性突然死71例の解析結果は、血液検体の死後変化が極めて強く、VA-HIT studyのような日米比較の検討ができなかった。その原因は日米法医解剖実施システムの違いによるものであり、東海大において実施してきた死後12時間以内の症例のみの解析に限るという条件が、確保できなかったことが最大の原因と考えられる。 また高レムナント血症を伴わない症例が、"ポックリ病症候群"全体の約1/3に認められたが、これらの症例に関しては遺伝子異常の解析をおこなった。致死的不整脈の代表的疾患として知られるBrugada症候群について、モントリオール大学医学部のRamon Brugada博士との共同研究が進展し、心臓ナトリウムイオンチャンネルの構成蛋白の一つであるSCN5A遺伝子の解析を行ったところ、"ポックリ病症候群"症例の中にBrugada症候群と同様の遺伝子変異を有する症例を見出している。今後ざらにこのような症例の精密な遺伝子解析を予定している。
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