研究概要 |
本研究の目標は,不確実性を内包する計算問題,つまり解の最適性や入力情報などに不確実性をともなう計算問題にも対応しうるアルゴリズム理論の構築に貢献することであり、中核となる系統的設計法に関して解決をせまられる諸問題の中から、代表的緩和手法である線形計画緩和と半正定値計画緩和に関し,以下のテーマに取り組むことである. 1.SDP緩和とLP緩和の能力比較.対象問題の構造特性との関係を調べるため,SDP緩和がLP緩和に帰着可能となるような構造特性を解明し,緩和能力および解精度に差が生じない問題のクラスそれぞれを特徴づける. 2.SDP緩和の汎用性.SDPは,整数二次計画とも密接な関係にあるので,まずはLPとある制約をみたす二次計画のモデル化能力について,特にそれらの幾何学的特性に着目して比較検討する. 3.ラウンディングと主双対法.双対計画問題の(最適)解情報や,主計画問題と双対の最適解の間に存在する相補性を,ラウンディングで利用する方法とその有効性について検討する.また,主双対法と局所探索を組み合せることで,主双対法が最大化問題に対しても有効性を発揮できるかを検証する. 得られた主な研究成果は以下の通りである。 1.2倍以上の開きがある2種類のコストのみが許されているグラフの木状被覆問題に対し、主双対法に基づく2倍近似アルゴリズムを開発した。 2.重みつき3-集合被覆問題に対しする貪欲法を改良し、与えられた重みにある一定の開きがある場合、同問題に対し近似度H(k)-1/6を多項式時間内に保証できることを示した。 3.集合多重被覆問題に対する貪欲法を改良し、同問題に対し近似度H(k)-1/6を多項式時間内に保証できることを示した。 4.生産計画問題のひとつとして容量つき需要供給問題(CSD)を新たに導入し、その構造解析のため、従来の劣モジュラ集合被覆を劣モジュラ整数被覆に拡張した。同時に主双対法に基づく近似アルゴリズムを発展させ、CSDに対し数値データに依存しない近似度の得られることを示した。
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