研究概要 |
グラフの木状被覆問題は,グラフの各頂点に隣接するように施設を木状配置する問題との関連から,Arkinらによって導入された問題である.と同時に彼らは,一様コストの場合に$2$倍近似保証アルゴリズムを,一般コストの場合に3.55倍近似保証をを提示している.実のところ一様コストの場合には,より早くからより簡単な2倍近似アルゴリズムが,Savageにより開発されている.一方,一般コストの場合は,その後アルゴリズムの改善が見られ,近似保証は3+εまで下げられている.この時点では,木状被覆問題では,一様コストと一般コストの場合で,保証できる近似精度に差があることを意味する.更に悪いことには,上述の(3+ε)倍近似アルゴリズムは,多項式時間とはいえとても実用的であるとはいえない代物である.このような状況を背景に,一般コストをもつ木状被覆問題に対し,より良い近似アルゴリズムを開発し,近似保証ならびに計算時間をともに向上させることを本研究の目標とした.得られた成果を要約すると,以下の通りである: ・まず,与えられるコストは2倍以上の開きがある2種類だけの場合に制限して検証した.その結果,線形計画の主双対法に基づいて設計された近似アルゴリズムにより,最大フロー問題の解法と同じ計算量で,2倍近似保証することが可能であることを示した. ・上記制限下での成功を基に,一般の場合について検討した結菓,高速な組合せアルゴリズムにより,この場合も2倍近似保証することが可能であることを示した.一般コスト用にこれまでに開発された,いずれのアルゴリズムもが,まず頂点被覆Cを計算してから,Cの頂点をシュタイナー木で連結させるという方法をとっていたのに対し,同アルゴリズムの特徴は,最小全域木に枝刈りを施すことで木状被覆を構成するところにある. 集合被覆問題(SC)は,よく知られた組合せ最適化問題で,与えられた部分集合の位数がいずれもk以下であるとき,それをk集合被覆問題(k-SC)と呼ぶ.同問題に対しては,食欲法を改良することで,一様コストの場合にH(k)-1/6の近似保証が示され,更に様々な局所探索の手法を取り入れることで,現在のところH(k)-1/2まで知られている.残念ながら,一様コストにおける,これらの改良方法は,一般コストの場合には通用せず,食欲法のH(k)を改善できるか否かは未解決問題として残されていた.本研究では,この未解決問題に対する最初の回答を,次のように条件付ながら,肯定的に与えた:一般コスト3-SCにおいて,異なる部分集合コストには2倍以上の開きがある場合には,食欲法を改良することでH(3)-1/6の近似保証が得られる.
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