研究概要 |
計算機科学の応用分野の複雑な対象を幾つかの要因を簡潔に表現し本質的な条件のみを抜き出してグラフに抽象化することで,対象上の諸問題をグラフ問題として扱うことが多い.このとき,グラフの連結特性の解析は計算機科学のいくつかの重要な分野において最も基本的かつ適用範囲の広い課題の一つである.本研究では,グラフの連結特性を特徴付ける数学的構造を解明し,これらに基づきグラフ,ネットワークに関する諸問題を解くアルゴリズムを設計した.本研究を通じてグラフの連結特性に関する数々の問題に対する成果を得ることができたが,以下ではマルチキャスト木問題,キューレイアウト問題,グラフ多分割問題に大別してその概要を述べる.グラフのマルチキャスト木問題:マルチキャスト木問題はNP困難な問題であることが知られており,幾つかの近似アルゴリズムが提案されている.本研究では最小スタイナ木問題の近似解を用いてマルチキャスト木問題の近似解を得るアルゴリズムを開発し,最小スタイナ木問題の近似比が改良される程,提案手法が従来の近似比を改良できることを示した.キューレイアウト問題:有効グラフの連結特性の解析問題の一つであるキューレイアウト問題において,従来,個別に研究されていた複数のグラフのクラスを含む反復ラインダイグラフのクラスのキューレイアウトについて研究した.本研究では反復ラインダイグラフのキュー数の上界と下界を提案し,得られた結果が一般に知られているdeBruijinネットワーク,Kautsネットワーク,バタフライダイグラフに適用できることを示した.グラフ多分割問題:グラフk分割問題は1994年にその計算量の節点数nの指数部がk^2に比例するアルゴリズムが開発されて以降,一般の定数kに関するk分割問題の決定性アルゴリズムの時間計算量は改良されていなかった.本研究ではその計算量の節点数nの指数部がkに比例する決定性アルゴリズムを開発し,従来までの時間計算量を大きく改善した.
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