伝搬遅延が短い低軌道(LEO : Low Earth Orbit)衛星ネットワークは、近い将来広域な移動体通信に大きな役割を果たすものとして期待されている。本研究では、インターネットと高い親和性を有する次世代LEO衛星ネットワークシステムの基盤技術に関する研究を行い、新しい情報インフラストラクチャーの基盤技術の確立を目指す。具体的には次に述べる4つの基盤技術、すなわち(1)柔軟なモビリティマネージメント技術、(2)高い公平性と効率性を有する衛星ネットワークプロトコル技術、(3)不正攻撃からネットワークを守る衛星ネットワークセキュリティ技術、(4)高効率なハンドオーバー・ルーティング技術、について研究を行い、世界に先駆けてこれら先進基盤技術の確立を目指した。 平成17年度では、当初の予定通り新しい基盤技術に関する諸検討を行い、理論およびシミュレーションや模擬ネットワークでの実験を通じ、LEO衛星ネットワークにおける基本的なモビリティマネージメント方式、伝送制御プロトコル、アタックを防ぐセキュリティ管理の基本方式、およびハンドオーバー・ルーティング方式を開発し、有用な成果を挙げている。具体的には、LEO衛星ネットワークのシミュレーション環境を構築し、地理情報を併用したモビリティマネージメントシステムを実装した。また、衛星の移動に伴うハンドオーバーは地理的な境界線を決め、それを超えるか否かによって分類し、ソフトウェアを実装した。ユーザの移動速度については、徒歩、自転車、自動車、新幹線、飛行機など交通手段別に定義し、それらが混在するケースを想定してシミュレーションを行い、提案方式の有効性を確認した。これらの成果はIEEEの論文誌や国際会議で採択されており、高い評価を得ている。
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