研究概要 |
本研究の目的は,高並列クラスタ計算環境において,共有メモリ型並列プログラミングモデルを採用することにより,プログラミング時の負担軽減と,並列実行時の効率向上との両立を図ることにあった。 1.高並列クラスタ計算環境における共有メモリ型並列プログラミングモデルの比較・最適化研究 今年度は,これまで主たる共有メモリモデルとして採用してきたOpenMPに対して,他のモデルとの比較を行った。プログラミングモデルは,ともすると独善的になりがちでもあることから,OpenMPと同等とまでは行かないまでも,比較的標準化の進んでいるものを候補として選定する必要があった。そこで,具体的にはUPCを中心にとり上げ,特にクラスタ計算環境との適合性を念頭に置きながら,言語仕様の比較を行った。 2.高並列クラスタ計算環境における並列プログラムのデバッグ/チューニング機能の検証 本計算環境における並列プログラムのデバッグ,および,実行効率のチューニング作業を迅速化するための各種支援機能について,種々の角度からの検討を行った。本研究では,並列実行環境としては主としてMPIの実装を利用してきた。この実装にも各種の版があり,また,それぞれ機能拡充のために不断の努力が払われてきている。本研究では,それらの成果を取り込みつつ,MPI(分散メモリモデル)とは異なるプログラミングモデル(共有メモリモデル)を使用することとなるプログラマへの適切なフィードバック法について考察した。 3.最終年度における研究のとりまとめ 3年間の研究を通して得られた種々の知見をとりまとめ,実際に構築したクラスタシステム上で,試験的に構築したプログラミング環境の評価を行った。各種の応用プログラムの中から典型的な並列計算スキームを抽出し,その部分に関するプログラミングの容易性と,その並列実行効率との関係について一定の成果を得ることができた。
|