本研究の目的は、テレビカメラなどで撮影した映像をもとに、さまざまな分野で利用されているイラストレーション映像へ変換する描画手法を開発することである。本研究では、我々がすでに研究発表している一枚の画像のイラストレーションへの変換手法を発展して、実写映像をイラストレーション映像に変換する手法を提案する。 このために以下のことを行った。 (1)入力映像に対して、特徴となる人が注目する部分を色や形の認知処理によって抽出し、画像の特徴と人の感性との関係を明らかにした。本研究において画像の特徴を表すために色の注目度や画像の複雑さを画像処理手法によって計算する手法を開発した。これらの手法は感性情報処理に基づく画像検索において提案したイメージカラー(インデックスカラー)の自動抽出法であり、従来から提案されている手法を改良した。この提案手法は、従来の画像処理分野における限定色を求める手法では得ることができなかったことを解決した。 (2)特徴部分を表現するために、画家の描画手法を分析し、それをもとに特徴の強調や省略のアルゴリズムを提案した。ここで(1)で明らかにした強調省略のための描画パラメータを提案し、複数の描画手法を評価した。 (3)デジタル映像を入力し、リアルタイムでNPR手法を利用した映像変換システムを構築した。このシステムは、映像変換フィルタ部分のソフトウエアを独立するように構築しているので、さまざまなフィルタの追加が容易である。
|