研究概要 |
本研究課題では,これまでに得た触作業における触覚の寄与率が固有感覚よりも大きいという知見にもとづき,指先圧迫による擬似力覚呈示装置を試作した.試作した装置の重量は一指につき18gで,0.5N〜2.3Nの指先圧迫力を制御可能であった.反力感覚評価実験では,圧迫力に対して良好な線形性が得られ,母指と示指の二指への擬似反力提示によって物体の大きさを正確に提示可能であることが確認され,指先圧覚のみの簡易呈示によって物体との接触の擬似的表現が可能であることが示された. さらに,簡易力覚提示装置を用いた仮想空間作業環境を構築し,その作業支援効果を実験的に検討した.システムは,開発した簡易力覚提示装置と,汎用剛体物理シミュレータOpen Dynamics Engine(ODE)を,バーチャルカップリングを介して接続することによって実現した.さらに,把持物体と他の物体の干渉を,速度や反力から検出して提示したところ,仮想物体の把持や移動作業に対する支援効果が示唆された. 以上の成果は,簡易な小型デバイスによる指先圧迫による擬似的な力覚提示が可能であるとともに,擬似力提示による仮想空間作業支援の可能性を示す基礎的知見を与えた.他方,共有仮想空間における力覚提示による共同作業支援に関しては,現在,基礎的システムの段階にあり,効果的な作業支援のための積極的な力触覚提示情報の改変の可能性や,認知負荷の観点からの評価など,さらに継続的な研究が望まれる.
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