研究概要 |
平成18年度は平成17年度において構築した経歴・オフセット法による関係データベースカーネルに基づいて,データベース処理の種々の面から検討し,関係データベースシステムとしてのより上位のサブシステムについて,設計・実装・評価した。特に,1.範囲検索の方式,2.並列処理の方式,3.SQLプロセッサの設計・構築,4.複合オブジェクトの実装について,新たな成果を得た。1.本経歴・オフセット法では,カラム値の範囲検索においては,ある特定カラムの検索性能は高いが他のカラムの検索性能は劣るといったカラム依存性の問題が発生し得る。この問題を解決して,任意のカラム(次元)についての範囲検索の高性能化の方式を提案し,実装・評価した。2.経歴・オフセット法の母体となる拡張可能配列は並列処理に対して親和性が高い。すなわち,部分配列集合全体は各次元に類別でき,各次元ごとにプロセッサーを割り当てれば,各部分配列の類別は独立にアクセスできる。このことに注目して,与えられたプロセッサー数に応じて,負荷分散するためのプロセッサー割り当ての方式,および並列検索結果を収集するための同期方式を設計・実装した。3.経歴・オフセット法による関係テーブルの物理データ構造の特性を活かせば,通常の関係テーブルの実装におけるより,はるかに効率よいSQLの処理方式を設計することができる。特に,(1)の範囲検索の方式を取り込んだ,テーブル結合の方式設計を行い,現在実装中である。4.複合オブジェクトはその属性として他のインスタンスオブジェクトへの参照をオブジェクトIDとして持つオブジェクトである。オリジナルの経歴・オフセットにレコードIDの概念を導入することにより,複合オブジェクト集合の効率よい検索・操作方式を提案した。
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