研究概要 |
人の空間認識能力や形状構築能力の評価は,脳の負傷や障害を検査し診断するための重要な医療ツールであり,さらに,脳の認知機能を解明しようとする研究においても不可欠なものである.これらの評価は,患者や被験者に,心的回転(mental rotation)のような純粋な認知タスクを与えるだけではなく,ブロックを配置したり,提示された通りにパズルのピースを並べるといった構築タスクを与えることによって実施されるのが一般的である. これらの構築タスクは,空間認識能力のみならず,知覚・計画・実行といった実際に日常生活で必要とする能力を評価することが可能である.これまでにいくつかの研究において,2次元ではなく3次元形状を用いた構築タスクによる評価が重要であり,有益であることが示されている.我々は,ブロックを提示された形状の通りに組み立てるという,3次元形状を用いた構築タスクを被験者に与え,コンピュータでその構築データを取得し,解析することで,人の空間認知能力評価を行うユーザインタフェースを提案し,検討を進めてきた. 本年度は,このユーザインタフェースを子供の脳障害の一つである発達性協調作業障害(DCD)に適用することを目的に,システムの変更や被験者実験の検討を行った. 子供がシステムを利用するために,これまである程度,力の必要であったブロックの接続を,強力な磁石を用いてサポートすることで,子供でも容易にブロックの構築ができるようにし,さらに組み立て形状が崩れてしまう問題の解決を図った.さらに,子供が楽しみながら評価実験を行えるように,遊び場を模した概念を取り入れ,遊び場にある様々な物体(ブランコや滑り台など)を手元のブロックで構築するタスクとした.まだ,構築後は,これらの物体を,手元のブロックを用いて操作することで遊べるようにデザインし,子供らが飽きることなくこのシステムを用いることができるようにした.
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