研究概要 |
モバイル環境において実世界上のオブジェクトに対する傾注を眼球運動より判定し,その際の視線分布により傾注対象をオブジェクト単位ではなくそのオブジェクトを構成する部分領域単位で識別する.それにより人の興味対象をより詳細に特定し,傾注部位に関する注視情報を元に,各ユーザの興味対象に関するモデルを構築する.そして,他者の体験に基づく興味対象モデルをユーザ間で相互に参照することを許すことで,実世界情報に関する検索・推薦を実現する手法について提案し,実験システムによる評価を行った。その結果,眼球運動計測に基づく本手法はユーザの興味対象モデルを獲得する上でユーザによる明示的な入力操作を必要としないという長所があるのみならず,従来のオブジェクト単位の興味対象モデルより情報検索・推薦の質が向上し,また,明示的に入力した振る舞いに関するデータに基づく手法と比較しても同程度の検索・推薦の質を維持できることが確認できた.この過程で,絵画,図形,風景などの視覚情報に対する傾注状態の判別には眼球の停留状態だけでなく一定時間長の停留の時間的な発生頻度による判別が精度向上のためにはより有効であるという知見が得られた. さらに,実世界上の行動に関する情報の検索に着目し,そのような情報を情報空間から効率的に検索するための手法として,実世界上の複数ユーザの行動に関する情報から行動のパスを暗黙的に検出し,それを滞在地点をノードとして表すことでグラフ化し,そのようにして得られた複数ユーザのグラフを統合することで集団の体験情報から情報空間中の情報の重みを再定義し,それに基づき情報検索を実現する枠組みを定義した.これにより,木の実世界上の体験情報を共有し,それに基づいて情報空間を人の行動(体験)の視点から再構成し,情報検索する新しい枠組みを構築することができた.
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