研究概要 |
グラフィカルモデルは,近年人工知能の従来の弱点を補強し,それに代わり得る手法として注目を浴びてきた.しかし,一方においてトポロジの制約や近似手法を改善し応用範囲を広げる必要がある.本研究課題では,マルコフランダムフィールドの新しい近似法を提案し,更にそれを一般的モデルに拡張し,人工知能や通信などの分野での応用を行うことを目的として行っている.初年度の目標は,基礎理論の構築とパターン情報処理への応用を行うことに集約される. 当該研究初年度である本年度は,上記目標に対し基礎理論の構築と顔画像検出への応用の基礎の構築を行い,その成果を国際会議で発表した.マルコフランダムフィールドは,応用上有効であるにもかかわらず,計算量が指数時間のため実世界での応用が難しい.平均場近似では,重要なファクタである相関の情報が得られない,またグラフィカルモデルのビリーフプロパゲーションの適用は,まだその理論的なベースが定まっておらず,収束が保証できない.本研究では,まずこれらの問題を解決するため,位相により相関を表現する平均場近似法の基礎を確立した.手法の有効性を見るため,これを顔画像検出に適用したときの性能を,この分野で高い性能を出すサポートベクトルマシンと比較し,種々の面で有効であることを検証し,国際会議での公表を行った. 一方,その後更に,位相による相関係数を有効に利用し,そのグラフ的構造を調べることにより,正のクリークとその間の相反関係の構造が顔検出学習の結果生じていることが判明し,これを更に認識精度を上げるために利用出来ることが判明した.独立主成分分析を応用した対象検出では,この相関構造が有効であることを,本年度検証し公表しているため,この知見を応用しさらなる検出精度の向上が出来ることが判明した.
|