本年度は初心者が技能を身につけていく過程を調べるため、サンバダンスを題材として上達過程を調査した。実験では高校生30名に協力を依頼し、ほぼ毎週1時間のダンスレッスンを一年間に渡って受講してもらい、その間にどのような変化が動作に現れるかを加速度センサーで計測した。実験の結果、標準的な被験者の場合、約3ヶ月で一定のテンポを刻めるようになり、さらに3ヶ月かけてサンバ特有のアクセントに対応する動作ができるようになることを見出した。またアクセントを身につける際は、まず腰部分にアクセント表現が観察され、その後に腕部分のアクセント表現が出現することを見出した。このことは体幹部の動作が腕を使ったパーカッション演奏の基礎となっていることを示している。この成果を海外で開催された国際学会で発表し、海外メディアで取り上げられるなど反響を呼んだ。 前年度は二名の方にご協力いただき、約半年に渡ってダンス教室に通ってもらいながら、身体動作をモーションキャプチャ装置で測定・記録したが、その実験を通して得られた成果をドイツで開催された国際学会で発表した。また、同じく前年度に実施したサンバとサッカー技能の関係に関する研究の成果を同じ学会で発表した。この研究はサッカーのワールドカップにおいて日本チームがブラジルチームと対戦することになったことが影響して、国内のマスメディアから注目を集め、民間放送局4局および多数の新聞社から取材を受け、研究内容が広く紹介されることとなった。研究の本質とは無関係であるが、身体技能の研究というコンセプトが一般の方々に知られるきっかけとなり有意義であった。
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