研究課題
基盤研究(C)
本研究では複数の知的エージェントから構成される社会を想定し、協調問題解決の過程で生じるエージェント間の交渉、調整、連携などの社交的行動のプロセスを計算論理によって形式化した。具体的には、エージェントの知識ベースが論理プログラミングの一形式である解集合プログラミングで記述されたマルチエージェントシステムを考え、(1)エージェント間の信念調整と信念結合の論理、(2)エージェント間の合意形成と知識連携の論理、(3)エージェント間の交渉の論理の3つのテーマで研究を行った。それぞれのテーマの研究内容は以下の通り。(1)ではエージェント間の信念調整の問題を複数の論理プログラムの間で均衡した意味を持つ新しいプログラムを構成する問題としてとらえた。そこで異なる信念調整と信念結合の枠組を導入し、それぞれの意味論を持つプログラムを元のプログラムから自動合成するためのプログラム変換を導入した。(2)ではエージェント間の合意を異なるプログラムが持つ解集合から共通の信念を取り出した結果として定義し、こうした合意結果をプログラムの意味として持つエージェント社会の知識連携を実現する方法を示した。(3)ではエージェント間交渉において相手から出された提案を評価し、必要に応じてエージェントが自らの知識ベースを基に新たな対案を構築するための推論メカニズムと交渉プロトコルを導入した。本研究は従来の単体エージェントを対象とした計算論理の手法を発展・拡張したものであり、既存の論理プログラミングの計算手続きを使って実現することができる。本研究では各エージェントが高次推論の能力を持つ知的プログラムとして与えられ、その能力がエージェント間の社会的相互作用において如何なく発揮されることで、エージェント相互間の高度なコミュニケーションが実現される。
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